兵庫県立芸術文化センターはちょいちょいお世話になる劇場です

兵庫県立芸術文化センターはご存じの通り阪急西宮駅近くにあります。
西宮というと阪神甲子園球場のイメージが強いけれど、阪急西宮駅の周りはちょっとおしゃれで、落ち着いた雰囲気があります。私は好きです。(阪神の西宮周辺はいったことがありませんのでよくわかりません。)
芸術文化センターはなかなか立派な施設で、催しものもコンサート、落語、演劇、狂言と多彩で、私もちょいちょい寄せていただいております。そういえば、初めてオペラを見たのもここでした。爆睡させていただきました。

今回の兵庫文楽は、十一代目豊竹若太夫襲名披露公演と銘打っています。

第1部 トーク『若太夫襲名に寄せて』、第2部 文楽『平家女護島 鬼界ヶ島の段』の2部構成です。
会場は満席。大阪の国立劇場はめったに満席にならないのに、電車で移動すればわずか1時間の西宮のこの劇場が満席になるってどういうこと?襲名披露公演の集客力かしら、それとも大阪日本橋と兵庫西宮の文化力の差かしらとか思ってしまいました。
襲名披露公演ですが、襲名披露の口上はありません。それどころか、第1部のトークに若太夫さんが登壇されるのかと思ってたらそれもありませんでした。これでも襲名披露公演なのかしら?

第2部は近松門左衛門の平家女護島

平家女護島は亨保4年(1719年)大阪竹本座初演の作品ですから、近松67歳の時の作品です。近松は亨保九年になくなっていますから、どちらかというと晩年の作になるのかな。文楽では今でもよくかかる作品ですし、見たことはないけど歌舞伎でもやっています。

平家物語で有名な俊寛のお話です。能でも『俊寛』という演目がありますが(こっちも見たことないけど)、これらを元に近松門左衛門が創作したものらしいです。

時の権力者平清盛への反乱を企てて仲間と3人鬼界ヶ島に流刑にされていた俊寛が、いろいろな経緯の末、いったん赦免されて本土に戻れるところを自らの意思で島に一人残り、仲間たちを乗せた船が出て行くのを見送るというお話です。
俊寛が自らの意思で島に残るというところが、平家物語や謡曲と違って近松の創作部分です。

「思い切っても凡夫心」といったん自らの意思で島に残ることを決意した俊寛が出て行く船に向かい「うち招き」「伏し転び」「焦がれて」「叫びて」嘆くところが見所です。
この未練がましいところが人間くさくてなかなかいいのです。

文楽のストーリーとしてはわかりやすく、現代に生きる我々にも素直に心に入ってくる浄瑠璃だと思います。
第1部のトークで海外公演でも評判のいい演目とのお話がありましたが、そうだろうと思いました。

本日は、浄瑠璃が豊竹若太夫さん、三味線は鶴沢清介さん。人形は俊寛を吉田和夫さんが使われました。

私も何回か『俊寛』は鑑賞させたいただいておりますが、俊寛といえば吉田玉男さん(二代目、初代玉男さんの舞台も何度か見ていますが俊寛を見たかどうかは覚えておりません)の印象がどうしても強いんです。
俊寛の人間としての矜持、一人取り残されるという孤独感。自らの矜持が招いたとはいえ残酷な結果に対する憤り、哀しみを玉男さんの俊寛は見事に描いていて胸に迫るものがありました。「ああ、いいものを見させたいただいた」という感想を持てるというのは文楽に限らず芸術に触れる喜びと思うのですが、玉男さんの俊寛はまさにその思いに至るものでした。

吉田和夫さんはいわずとしれた当代きっての人形遣いです。人間国宝でもあられます。どんな人形をお使いになっても期待以上のものを見せてくれます。特に老婆や老爺をお遣いになるときは素晴らしい芸を示されるます。(と私は思います。)
今回の俊寛もよかったのですが、私には玉男さんの俊寛が強烈すぎて、少し物足りないものも感じました。人形のせいだけではないのかもしれませんが。

三味線の鶴沢清介さんは私の推しの人です。

清介さんは力強い演奏も、精緻な演奏もお手の物です。ですが、何よりこの人の魅力(私にとってのですが)は実はおしゃべりです。座談会とかでお話になるときは、次から次へといろんな話が出てきて飽きさせません。
今回の若太夫さんの襲名披露前夜祭(国立文楽劇場)では、若大夫さんと一緒に出ておられ、司会の桂南光さん相手に軽妙なおしゃべりをご披露くださいました。
また、毎年開催されている大阪公立大学(旧大阪市立大学)の上方文化講座では桐竹勘十郎さん、竹本錣太夫さんと3人で講師を務められておりますが、この講座がとっても面白くかつとってもためになる講座で、何年か前にこれに参加して清介さんのファンになりました。
今年も申し込んだのですが、残念ながら去年に引き続き落選してしまいました。

浄瑠璃はもちろん豊竹若太夫さん

そら襲名披露公演なんやからそうやろうとはいえ、若太夫さんと「俊寛」という組み合わせが、本公演ではまあないんではないでしょうか。
第1部でも司会の女性が若大夫さんと「俊寛」というのはちょっとイメージかみたいなことおっしゃってましたが私もそう思います。

若太夫さんはお声が細い。
呂太夫さんの時代にシャークスピアを文楽に翻案した「不破留寿之太夫(ふぁるすのたいふ)」を語られるのを聞いて感心したことがあり、また、そのご経歴(先代若大夫の孫ということではなく、文楽の家に生まれながら文楽に関わる気はなく、東大を2浪し、小説家を目指していたのに、祖父の死をきっかけに文楽の門をたたいたという経歴)からなんとはなしに気になる太夫やなと思ってました。
声は細いけど、情のある語り口で何より聞きやすいので好きでした。

しかしながら、今回の俊寛はちょっとがっかり。
先代の若大夫さんは聞いたことがないけど、津太夫さんのような豪快な語り口だったそうだ。
津太夫さんも生で見たことはないけれど、記録映像を見ると、いやはやこりゃすごいわと思います。
今度の若大夫さんは先代や津太夫さんの芸風とは芸風が違うと思うけど、芸風と襲名は違うのかな?よう分からんけど、

お昼ご飯

開場の1時半には少し早い時間に西宮に着いたので、お昼をネットで探しました。

「むーしゃむーしゃ」という洋食屋さんがおいしそうだったので、ハンバーグとエビフライに決定。お店に行ったら7人待ちと言われましたので、諦めました。

近くにおそば屋さんが会ったので、入りました。
「そばやし」というお店。おなかすいてたのでお昼の定食の天丼を頼みましたが、天丼もおいしかったのですが、おそばがとってもグッドでした。
おそばメインにしたらよかった。

投稿者

hama

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